写真家 片野智浩さんの写真展「ひそませて」に伺いました。
男性を被写体にした撮影を行っていて、そのシリーズで今回は3回目の個展。
静かな高級住宅街の中にあるギャラリーで開催されています。
写真を撮るということは自分自身と向き合うということだと思っています。
作品を見ると、作家がどのような気持ちで被写体と向き合っているか
ということが透けて見えてきます。
被写体に対してどういう視点が自分の中にはあるのか。
私は自分と向き合うことでいっぱいいっぱいで、
人を撮るのは仕事として依頼されたときだけです。
被写体には役割として関わるだけで済むからです。
片野さんの作品にはうーんと唸りました。
見たことのない世界観。
「おもしろい」と何度も口にしてしまいました。
男性は社会的な生き物です。
写真に撮られることに慣れている人が増えている時代ですが、
心の芯にある部分は変わらない。
ジェンダーレスという時代を迎えていますが、
いつもと違う「自分」を演じることのできる女性とは違う存在です。
その男性たちが自我から抜け出し、無機質な身体だけの存在になっているのです。
プライドとか羞恥心とか、そういう感情を知らない存在になってカメラの前に身をさらけ出しているのです。
だからと言って、不安定とか絶望とか、ネガティブにフォーカスしていません。
筋肉が美しい身体、情熱を帯びた表情。
そのような「男らしさ」の表現からはかけ離れています。
ポートフォリオと言うには顔や身体の角度がそれとは違います。
プライベートな時間を共有する大切な人にだって見せることはなかなかない。
もしかしたら、たった一人になって、さまざまな役割から解放されたときにだけ
ふと見せる表情かもしれない。
そんな切り取られ方。
おもしろいアプローチです。
片野さんのステートメントを読むと、理解が深まります。
インスタレーションのような展示にもヒントがあります。
私はモデルさんを目の前にしたとき、どんな距離感で撮影するだろう?
どんな世界観を描くのだろう?
ちょっと触発されました。
gallery 201 にて6月9日まで。
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